口腔内を清潔に保つためには、毎日の歯磨きがとても重要です。
しかし、歯の磨き過ぎは“オーバーブラッシング”といって、大きな負担をかけ、結果的に歯の寿命を縮めてしまいます。
虫歯や歯周病の予防として大切な歯磨きですが、適切な回数や時間、正しい方法で磨かないと思わぬトラブルに見舞われてしまいます。
今回はオーバーブラッシングによって生じる症状や、トラブルが生じた時の対処方法、そして、正しい歯磨きの方法をお伝えしていきます。
オーバーブラッシングのリスク
オーバーブラッシングとは、名前の通り、過剰な歯磨きのことを指しています。
必要以上に力を入れてしまったり、長時間磨いたり、歯磨き粉を使いすぎてしまうと、歯や歯茎に傷がついてしまいます。
これらは、歯の寿命を縮める行為ですので、今回の記事を参考にしながら、正しい歯磨きの方法を実践してください。
象牙質知覚過敏の原因になる
歯を強く磨きすぎると、歯の表面のエナメル質がすり減り、象牙質が露出してしまいます。
この象牙質は刺激を過敏に受け取るため、露出すると、冷たいものや熱いものががしみるといった知覚過敏の症状が出ます。
歯は一生ものだとよくいいますが、削れたエナメル質も同様に再生することはありません。
象牙質を露出させないためにも、適切な力加減で歯磨きを行うようにしてください。
歯茎が痩せて下がってしまう
歯茎が痩せる原因は、歯周病や加齢にもありますが、最も身近なところでは、力を入れすぎた歯磨きにあります。
歯磨きによって歯茎に傷がつくと歯肉が退縮してしまうのです。
元々歯茎に覆われていた歯の根っこは歯質が柔らかく、汚れが付着しやすいため、知覚過敏だけでなく、虫歯にもかかりやすくなります。
また、強い力で歯を磨くと、歯茎が負けじと硬く盛り上がる“フェスツーン”と呼ばれる症状が出ることもあるため注意が必要です。
正しい歯磨きの方法、実践できていますか?
歯科医や歯科衛生士の「ブラッシング指導」を受けたことがある方も多いと思いますが、実は多くの方が正しい歯磨きの方法を実践できていません。
正しいブラッシングのポイントは、大きく分けて以下の3点です。
・歯ブラシの選び方
・歯磨きの時間
・磨く順番
それぞれ詳しく解説していきますので、是非今日からでも実践してみてください。
正しい歯の磨き方
市販の歯ブラシは「やわらかめ」、「ふつう」、「かため」の3つがありますが、ブラシが硬いと歯や歯茎を傷つけてしまうことがあるため、「やわらかめ」や「ふつう」を選んでください。
ヘッドの大きさは、前歯2本分が理想的ですので、ご自身の歯のサイズに合わせて選んでみてください。
歯の磨き方は、大きく分けて3種類あります。
スクラビング法
ペンと同じ持ち方で歯ブラシを握り、歯に対して直角に歯ブラシを当て、小刻みに磨いていく方法です。
歯の表面や歯と歯の間を綺麗に磨ける方法で、歯茎への負担も少ないです。
バス法
歯周病や歯肉炎の症状や疑いがある方、歯並びの悪い方にはこのバス法がおすすめです。
「やわらかめ」の歯ブラシの毛先を歯と歯茎の間に斜めに当てて、左右に動かすようにして磨いていきます。
歯周ポケット内の汚れをかきだし、同時に歯茎のマッサージをすることもできます。
フォーンズ法
上下の歯を噛み合わせたまま、歯に合わせて歯ブラシを直角に当て、くるくると円を描くように磨いていく方法です。
3つの方法の中でも最も簡単な磨き方ですので、小さなお子様や力を入れにくい高齢者の方にも最適です。
歯ブラシは、1ヶ月で新しいものに交換してください。
1ヶ月の間に毛先が広がるようであれば、それは力の入れすぎですので、力加減を調整してみてください。
じっくり丁寧に磨く
慣れるまでは鏡の前で、1本ずつ丁寧に磨くように実践してみてください。
はじめは、5~10分くらいかかると思いますが、鏡を見ずにできるようになれば、だいたい3~4分で磨けるようになります。
磨く順番を決める
磨く順番は何処からでも問題ないですが、磨き残さないよう、自分で歯磨きする時のルーティンを決めておくと良いでしょう。
とくに歯と歯の間や歯茎との境目、奥歯は磨きにくく、汚れが溜まりやすい場所なので念入りに磨くようにしてください。
歯間ブラシやデンタルフロスなども使用してみると、より効果的です。
まとめ:歯磨きしすぎのトラブル
オーバーブラッシングは、知覚過敏や歯茎の痩せ、歯や歯茎そのものを傷めてしまうこともありますので、今回ご説明した正しい歯磨きの方法を参考にお手入れをしてみてください。
重要なのは、「自分の歯に合った歯ブラシを選ぶこと」、「力を入れすぎずに磨くこと」、「歯と歯の間や奥歯などの磨きにくい部分もしっかり磨くこと」です。
正しく歯を磨いているのにトラブルが生じてしまったという時は、なるべく早めに歯科医院を受診するようにしてください。
当院は、歯の症状等に応じた処置だけではなく、患者さまの歯や歯茎に合わせたブラッシング指導も行っております。
ブラッシング指導では、磨き残しがみられる箇所やオーバーブラッシングになっていないか、磨き方のコツなどを知ることができますので、是非日々のお手入れに活かしていただけると幸いです。
また、予防歯科の観点から、歯、そして全身の健康を見据えた取り組みも行っておりますので、歯や全身の健康寿命を延ばしたい方は是非お気軽にお問い合わせください。