テレビのコマーシャルなどで、よく耳にする「歯周ポケット」。歯と歯茎の境目にある、深い溝のことを指す言葉です。
日々のブラッシングで、その部分を気にしながら磨いている方もいらっしゃるでしょう。
実は歯周ポケットが、口臭や歯周病の原因になりうることをご存知でしょうか?
本記事ではその内容を徹底深掘りし、適切な治療法やブラッシング方法も併せて解説します。
歯周ポケットがあることの弊害
1.内部へ細菌が溜まる
歯周ポケットはその名の通り、ポケットのごとく袋状になっています。歯ブラシやフロスでは内部の汚れを取り除けないため、細菌が蓄積して袋が深くなっていくでしょう。その結果、細菌の巣窟となってしまいます。
2.歯茎が炎症を起こす
内部に細菌が溜まっているときに、身体の免疫力が低下すると細菌が活発になります。歯茎が腫れて、痛みを伴うでしょう。疲労や風邪、睡眠不足などに注意が必要です。
3.周囲の骨が溶ける
内部には歯周病の細菌が常時潜んでおり、その影響で歯茎が後退したり歯が揺れたりします。最終的に歯の周囲の骨がすべて溶けて、歯が脱落するでしょう。
4.口臭が発生する
内部には細菌だけでなく、膿や汚れが蓄積し続けています。それが原因で、腐敗臭のような口臭を放つようになるでしょう。
5.知覚過敏になる
歯と歯茎の間へ隙間ができることで、歯の根元の象牙質に冷たいものが触れて知覚過敏を起こします。
歯周ポケットができる原因
1.歯垢
一番の原因は、歯や歯茎の周りに残った歯垢(プラーク)です。
歯垢が付着した状態で過ごしていると、歯茎が炎症を起こして歯周ポケットができます。つまり歯垢さえなければ、歯周ポケットは発生しないのです。
深さがある歯周ポケットほど、歯垢の除去が難しくなります。歯垢のない清潔な口腔状態を維持し、歯周ポケットを形成させないことが大切です。
2.歯ぎしり
就寝中などに歯ぎしりをすると、歯が左右に揺さぶられます。すると、歯と歯茎の間にできた隙間から細菌が入り込むでしょう。その結果、歯周ポケットが形成されてしまいます。
また歯ぎしりが原因で歯へ亀裂が入ることもあり、雌雄ポケットを広げる恐れがあります。
対策としては就寝時に専用のマウスピースを装着し、歯を保護するのが有効です。
3.親知らず
親知らずは最奥に生えるため、斜めや横向きになりがちです。真っ直ぐ生えていない場合は、その手前の歯へ深い歯周ポケットを作ってしまうでしょう。
成人前後で抜歯をすれば、骨が形成されるため歯周ポケットが残る心配はありません。しかしそれ以降の場合は、抜歯をしても残る可能性があります。
必ずしも抜くべきというわけではないため、抜歯の必要性に関してはかかりつけ医へ相談しましょう。
4.適合していない被せ物
治療後の被せ物が適合していない場合、そこが細菌のすみかとなります。また噛み合わせの問題で、特定の部分だけが強く当たると、歯が揺さぶられて歯茎へ隙間ができるでしょう。
適切な治療法
1.深さがない場合(1~2mm程度)
1-1.正しいブラッシングを行う
歯の根元へ歯垢を残さないために、歯ブラシやフロスを用いて丁寧にケアします。2~3週間程度続けることで歯茎が引き締まり、細菌が侵入しにくい状態となるでしょう。腫れがひき、隙間がなくなります。
1-2.歯科クリーニングを受ける
歯垢は歯ブラシでキレイになりますが、歯石は自力で落とせません。また歯が重なって生えている場合、磨き残しが生じやすくなります。
このような汚れは、歯科医院で受けられる、専用の器具を用いたクリーニングで落とせます。一度で終わりではなく、定期的に受けることをおすすめします。
1-3.歯石を除去する
「歯石」とは、細菌が唾液の成分と結合して石のように硬くなったもののことです。先述した通り、歯科医院で超音波を用いた器具を使って砕きながら除去しなければなりません。
歯石はザラザラとしているため、放っておくと細菌の巣窟になり危険です。歯石を取り除いて歯の表面がキレイになれば、細菌が繁殖しにくい環境となるでしょう。
2.多少の深さがある場合(3~5mm程度)
深部の歯石を除去する
内部へ付着した歯石を、歯科医院で取り除きます。
ただ歯周ポケットの深部へ溜まっている歯石は、細菌と血液が固まったものです。歯に強くくっついているため、数回に分けて除去する必要があります。
歯根は複雑な形状をしているため、除去後は面の部分を磨いて歯石が再びつかないようにします。
3.かなり深い場合(6~8mm程度)
外科的処置を施す
ここまで重度になると、入り口部分からの歯石除去が困難です。医師が目視しながら確実に取り除く必要があるため、外科的処置を施します。
麻酔をした状態で歯茎を切開し、内部の歯石を除去するというものです。また骨の形状を整えたり、人工骨を埋入して歯周ポケットを浅くしたりするケースもあります。
4.深さが9mm以上の場合
抜歯を行う
歯の長さは個人差がありますが、だいたい10mm程度です。つまり歯周ポケットが9mm以上ある場合、根の先まで達しているということになります。
改善の余地がないと判断し、根の一部や歯自体を抜くことになるでしょう。悪い歯を残すと、ほかの歯にも悪影響を及ぼす恐れがあります。
今回は、歯周ポケットについて詳しく解説しました。
定期的に歯科健診を受け、清潔な口腔状態を維持しましょう。